漢検1級を取るための10ヶ条
最終更新日2010年3月20日
ひょんなことから漢字検定1級に合格してしまった私(でも結構勉強しましたよ)一年間の勉強で合格のためにお勧めすることを「漢検1級を取るための10ヶ条」としてご紹介します。
その1:とにかく問題を知る |
その2:市販の参考書の使い分け |
その3:調べるなら手持ちの辞書とコレで十分。 |
その4:漢字力+語彙力 |
その5:国字は押さえる |
その6:当て字は「熟語」として覚える |
その7:故事成語は意外に易しく、四字熟語は意外に難しい |
その8:音読みも訓読みも熟語で覚える |
その9:日常生活を怠らない |
その10:あとは神頼み? |
(一) | 短文中の単語の読み 音読み20問、訓読み10問 |
(二) | 短文中の単語の書き取り15問。最後4問は同音異義語2問×2語 |
(三) | 短文中の単語の書き取り。すべて国字で答える。5問 |
(四) | 意味に該当する単語を選択肢から選ぶ。選択肢は仮名。解答は漢字。5問 |
(五)−問1 | 四字熟語の一部に入る語を選択肢から選ぶ。選択肢は仮名。解答は漢字。 前半2文字を問う問題5問、後半2文字を問う問題5問 |
(五)−問2 | 意味に該当する四字熟語を問1の10個の四字熟語から選び答える。 解答は四字熟語の記号。5問 |
(六) | 熟字訓、当て字の読み。10問 |
(七) | 二字熟語とその一方の字を使った訓読みの読みをそれぞれ答える。 熟語5問。訓読み5問。 |
(八) | 10個の熟語の対義語・類義語をに該当する単語を選択肢から選ぶ。 選択肢は仮名。解答は漢字。対義語5問、類義語5問 |
(九) | 故事・諺の中の単語の書き取り。10問 |
(十) | 発行された小説などの書物の一部の使った読み書き。 書き問題10問、読み問題10問 |
以前は旧字体を答える問題や国名・地名の当て字を答える問題があったがここ数年は上のスタイルの問題形式になっています。多分このスタイルでしばらくは出題されると思います。合格を目指すうえでは、まずこの問題形式を頭に入れることが大事です。
書店へ行けば漢字検定の過去問題集があり、各年度で実際に使われた問題がそのまま掲載されています。大きな本屋であれば前年度の分も置いてあるときもあります。私の場合は19、20、21年度版を買いました。各年度3回試験が行われていますので、3冊で9回分。これを実際に試験時間1時間で答えてみます。おそらく3回位で得意・不得意分野や時間配分などがつかめると思います。そこから他の問題集や辞書を使い勉強を進めて、残りの過去問題に挑むと実力が付いてくると思います。
漢検過去問題集 1級/準1級 | 日本漢字能力検定協会 |
完全征服−漢字は生涯の友− 漢検1級 | 日本漢字能力検定協会 |
本試験型 漢字検定1級 試験問題集 | 成美堂出版 |
始めの2冊は漢検を主催している協会が発行しているものです。始めの本は前回書いた「過去問題集」、2番目の本は練習問題形式のものです。3番目の本は別の出版元から出されていますが出題形式が本試験と全く同じであるため、模擬試験として最適です。
では他の参考書は買ってはいけないかというとそうではありません。買って損はありません。ただし「真剣に解かない」ある程度出題形式に沿った問題はありますが、ほとんどは(良い言い方で)趣向を凝らした問題になっています。中には同じ単語を問題・解答として使ったものも見受けられます。そのため合格に向けて勉強する上ではあまり適していません。問題を見ながら「この単語の意味は何だろうか」と問題に出てきそうな単語を調べたり、日常生活で知っていて得するような知識を取り入れる分には損傷はありません。
そのほか個人的な意見として、古本屋で1級向けの本があったらぜひ買ってください。「毎年新しい参考書を出しているから以前の参考書も欲しいからな」という意見もありますが、実は本の内容は(全部調べたわけではないですが)全く変わっていません。毎年同じ本を出しているならちょっとでも費用を抑えるために古本があれば買っても問題はないと思います。ただし、あまり1級の本を古本屋で見かけることはないです。
数学とクイズでくつろいで<漢検1級を取るための10ヶ条
その3:調べるなら手持ちの辞書とコレで十分。
私は協会発行の辞書(古本屋で購入)を持っています。前回紹介した問題集を読みながら、単語の意味をその辞書で調べていきましたが、掲載していない単語もいくつかありました。割合でいうと問題集全体の1割程度です。載っていない単語については手持ちの辞書で調べたり、近くの図書館で調べたりしました。それでほとんどの単語の意味は調べられると思います。
しかし、それでも調べきれない単語も2,3語あります。それらはどのように調べれば良いか?使ってくださいインターネットを。分からない単語を検索すると、サイト上の独自の辞書を載せているところもあります。私たちと同じように1級を目指す人たちがまとめたサイトで単語の意味を載せているところもあります。また、もともとの文献について書かれているところもあります。それらを見ながら単語の意味を知っていく方法もありますので、ぜひ活用してください。
その4:漢字力+語彙力
何の予備知識もないまま問題を見ると「答えが分からない」ことは当然だと思いますが「答えを見ても(聞いても)分からない」ということが良くあります。つまり言葉自体が知らないものばかりです。そこで漢字を覚えることも大事ですが、言葉の意味を知ることも大事です。
例えば熟語を見ると
その5:国字は押さえる
どの漢字をどのくらいまで押さえれば良いのか?はっきり言うと全部です。しかし全部を一つ一つ頭に入れるのは難しいです。そこで私が1級の漢字の中で始めに覚えたのは「国字(日本で作られた漢字)」です。先ほどの「完全征服」には1級対象の漢字とは別に国字のページがあります。ちょっと数えたところ120個の国字が1級の出題対象になっています。120個は多いと思いますが、6000個に比べると少ないです。おまけに、国字は現在のところ試験に必ず出題されます。国字の書き取り5問。各問2点で合計10点分あります。もし完璧に覚えていれば確実に10点は取ることができます。
しかし120個の国字、やみくもに覚えるのは難しいです。そこで私は次の3つに
分けて覚えていきました。
その6:当て字は「熟語」として覚える
「信天翁(あほうどり)」「石竜子(とかげ)」
「行器(ほかい)」「牛膝(いのこずち)」
実はこの問題に関してはこれといった対策を考えませんでした。理由の一つは一問の得点が1点であること。この問題にあれこれ対策をしていてもきりが無い上、全部正解でも10点。それならば、この問題は6〜8点でも(このぐらい取ることも大変ですが)他の問題で点数を取る方が良いと考えていました(完全に「1級合格」という目標のための勉強でごめんなさい)ですから一通り問題集の言葉を見てそれを覚える、その程度の対策しかしませんでした。
「それでもアドバイスが欲しい」という方に一つアドバイスです。当て字の問題は「熟語」としても覚えてください。例えば次の当て字を読むことができますか?
「杜鵑(ほととぎす)」「螽斯(きりぎりす)」「尺蠖(しゃくとりむし)」
数学とクイズでくつろいで<漢検1級を取るための10ヶ条
その7:故事成語は意外に易しく、四字熟語は意外に難しい
我が身をツネって人の痛さを知れ。(平成18年度出題)
特に最後の「ゴジョウ」は国字を使っていますので、国字を押さえていれば答えられます。そのほかにもことわざ独特の表現などもありますが、これらについては意味も覚えていくと「意味→単語の意味→漢字」と
いう思考回路で答えを導くこともできます。
また1級、準1級の試験では四字熟語の問題が計15問出題されます。実は四字熟語についてはお勧めという勉強法が思いつきませんでした。そのためか今回の試験でも四字熟語の点数は低かったです。
四字熟語の問題は、ことわざ問題のように書き取りとの繋がりも少なく、独特の読みをする単語もあります。改めて考えると「四字熟語」は「文章の省略形」のようなものです。例えば
隔靴掻痒 ⇒⇒ 靴を隔てて痒みを掻く
このように考えると、四字熟語は、やはりことわざの問題のように一つ一つ意味や元となった話などと共に覚えていくしかないようです。
その8:音読みも訓読みも熟語で覚える
しかし、この音読みも意外と厄介です。例えば
「灑」の訓読みは「そそぐ(灑ぐ)」、つまり水などできれいにするという意味です。この字を使った熟語を見ていくと、この「そそぐ」という意味で使うときは「さい」と読み、「さっぱりしている」という意味で使うときは「しゃ」と読んでいるようです。「熟語の読み→訓読み」という覚え方が良いと書きましたが、逆に「訓読み→音読み」という流れを使うと更にお互いの読みを覚えやすくなっていきます。
その9:日常生活を怠らない
しかし、勉強以外の時間も侮ってはいけません。漢字検定では日常使う言葉に関する問題も数多く出てきます。過去の問題で日常使われる言葉を拾ってみると
獰猛、臙脂(色)、付箋、雛霰、蜃気楼
また、テレビのニュースなどで字幕が出ますが、漢字表記の制限により熟語の一部を平仮名で表記していることがあります。
だ捕、し烈、しん酌、改ざん、一る(の望み)
その10:あとは神頼み?
試験までの日数が残り少なくなると焦ってきます。「もうちょっと試験の日は遅くならないかな」という気持ちも出ますし、逆に「とっとと試験をして欲しい」という気持ちも出てきます。そこでちょっと気分転換もかねて神社などに行って合格祈願のお参りにでも出かけてください。漢字のことなど忘れて…と言いたいところですが、漢検の問題には神仏に関する言葉も多く出ています。
伽藍、閼伽、霊廟、仏龕(読みは皆さんで調べてください)
私は福岡に住んでいるという特権(?)を生かして、太宰府天満宮にお参りに行きました。大宰府では新年の行事として「鷽替え(これも読みは調べてください)」という神事が行われます。この「鷽」も漢字検定の問題集に掲載されています。気分転換としっかり覚えたものをフィードバックするためにちょっと遠出をするのもいいものです。
問題の流れもつかんで、参考書を買って…あとは辞書(漢和字典)です。辞書に関しては高校時代に使っていたある程度の漢和字典があればそれで十分だと思います(小学生向けの辞書では不十分…というのは分かりますよね)日本漢字能力検定協会が発行している「漢検 漢字辞典」もあります。漢字検定の何級に該当するかが書かれていて字も大きいため勉強する上では便利かもしれませんが、必ずしも必要ではありません。
(インターネットは当て字の問題などで出てくる動植物を調べる上でも便利です。画像検索をするとその物の写真が数多く出てきます)
(前回、前々回の参考書、辞書について一つ持った方がよい本を加えます。日本漢字能力検定協会から発行している「漢字必携一級」という本です。1級で使われる漢字はもちろん、常用、人名漢字、準1級で使われる漢字、国字、四字熟語が書かれています。ちなみに私は持っていません。)
では勉強をしましょう、と問題を見ます。「テレビのクイズ番組の問題を答えられるから大丈夫だろう」と思う方もいるはずです。それは甘いです。テレビで出題される問題は視聴者向け「子供からお年寄りまで」分かるような問題がほとんどです。実際の漢字検定の問題ではテレビで出題されるような問題は半数以下と考えてください。
1級の出題範囲にある漢字は非常に多いです。私の持っている「完全征服−漢検1級」(日本漢字能力検定協会)には1級の出題対象となる漢字がすべて載っていますが100ページに渡って表の形で載っています。これらに加えて準1級の範囲の漢字および常用漢字も加えて六千字が1級の出題対象となる漢字です。
国字を覚えておくべきもう一つの理由は「他の問題で書いても正解になる」こと。例えば「えび」「(雪の上を滑る)そり」は「海老」「橇」のほかに国字ではそれぞれ「蛯」「轌」があります。1級、準1級ではこれらの漢字で答えを書いても正解になります(注意:2級以下は常用漢字が範囲になりますのでこれらの漢字は不正解になります)まずは国字を集中的に覚えて、残り5880字を覚えてください。
漢字検定1級の問題の名物(?)といえば「当て字・熟字訓」の問題です。
1級、準1級の試験では、ことわざ・故事成語の問題が10問出題されます。
出題は語中の単語の書き取り問題です。これに関しては「ことわざ・故事成語」
を勉強するのではなく、普通の書き取り問題で力を付けていれば答える問題が多いです。いくつか例を挙げます。
千日のカンバツに一日の洪水(平成19年度出題)
ヤスリと薬の飲み違い(平成20年度出題)
飽かぬは君のゴジョウ(平成20年度出題)
象箸玉杯 ⇒⇒ 象牙の箸と玉(宝石)の杯
延頸挙踵 ⇒⇒ 首(頸)を伸ばして踵を挙げる
1級の検定の問題は全部で130問。このうち熟語(四字熟語も含む)の問題は約80問と半分以上を占めています。訓読みの問題も「普段使う文字と違う文字を使う訓読み」などが多いため勉強しますが、まずは熟語を意味もあわせて覚えてその意味から熟語を構成する漢字の訓読みを覚えると楽に覚えることができます。
同じ「灑」を使っていながら「さい」「しゃ」と2通りの読み方をします。「なぜそう読むの」と疑問に思われても私は「そう読んでいるから」としか答えようがありません。
もう一つ熟語の読みで厄介なものが「濁音になるかならないか」という点。「大」を使った熟語でも「たい」と読むものと「だい」と読むものがあります。これらについては…コツコツと覚えてください。
1級を目指して猛勉強、と言っても私たちは生きています。食べなければいけませんし仕事もしなければいけません。一日中漢字漬けになるよりは普段通りの生活をしながら1日数時間でも集中して勉強する方が意外と身に付くことがあります(私はどのような勉強時間だったか覚えていません)
膠着、信憑(性)、嗜好(品)、濾過
これまで9回に分けて、漢字検定1級に合格するためにお勧めすることを書いていきました。これ以上書くことがありません…というのは大袈裟ですが、あとは皆さんでこの勉強法が良いと思ったらその方法で進めてください。