数学とクイズでくつろいで数学の部屋どこよりも遅い!センター試験数学 解説工業数理基礎 第2問 解説

どこよりも遅い!工業数理基礎 第2問 解説

最終更新日2010年10月13日

 第2問は乗用エレベータの床面積と最大積載質量・定員との関係、またロープ式エレベータの釣り合い重りの最適化について考えている。

問1

 上の図に示す ABCDE の床面形状を持つエレベータのかごを例にとり、この床面積を考える。出入り口側の AE は直線で、奥側の BCD は放物線である。AE の中点を原点 O として、図のように x 軸、y 軸をとるとき、床面形状は y 軸に対して線対称であるとする。

したがって床面積 S は以下の通りになる。

 かごの横幅(AE の長さ) が 2.0 m、最大奥行き(OC の長さ)が 1.8 mで、床面積を 3.2 平方m にしたい場合、a = 1.0, c = 1.8 より上の式に代入すると

3.2 = 2 × 1.0 (b + 2 × 1.8) / 3 ⇒ b = 1.2

となるため AB の長さは 1.2 m にすればよい。

 次に、最大積載質量について考える。法律では床面積 S に応じて基準となる積載荷重 F_0[N]が以下のように規定されている。

S が 3.0 平方mを超える場合は、

3.0 平方m までの分の積載荷重を 13,000 N とする。
3.0 平方m を超える部分に対しては1平方m当たりの積載荷重を 5000 N として計算する。

以上2つの荷重値の合計を F_0 とする。

これらの計算を式で表すと

F_0 = (S - 3.0)× 5900 + 13000

(順に解答群の7.8.が入る)となる。

 S = 3.2 平方m のときの最大積載量、および定員を計算する。このとき上の式より

F_0 = (3.2 - 3.0)× 5900 + 13000 = 0.2 × 5900 + 13000 = 14180 N

となる。この基準積載質量に相当する質量 M_0 [kg] は F_0 = M_0 g (g:重力加速度) という関係式から

M_0 = F_0 / g = 14180 / 9.8 ≒ 1447 kg

最大積載量は M_0 より大きく、50 kg の整数倍の値の中で最小の値に決めるものとする。1400 < 1447 < 1450 であるため、S = 3.2 平方m のときの最大積載量は 1450 kg (解答群の5.) である。定員を求めるときには一人当たりの質量を 65 kg として計算する。求めた最大積載量をこの値で割り、小数点以下を切り捨てることで定員が決められる。

1450 / 65 ≒ 22.30

であるため、S = 3.2 平方m のときの定員は 22 人となる。


問2

 多くのロープ式エレベータは図2のように「かご」と「釣合いおもり」を滑車を解して連結された構造となっている。かごの昇降は巻上機により滑車の回転させることにより行われるが、おもりの利用により、滑車による仕事を軽減させることができる。このことについて検証する。簡単にするために以下の状況で検証する。

 一般に、質量 m [kg] の物体には mg [N] の重力が働き、これを高さ h [m] だけ上昇させる仕事は mgh [J] となる。かごが空の状態での質量を C [kg]、おもりの質量を M [kg] とすると、それぞれに F_1 = Cg [N], F_2 = Mg [N] の重力が働く。
 F_1>F_2 のとき、かごの質量が大きいため、巻上機がかごを引き上げるために必要なロープに沿った最低の力は、F_1 - F_2 = (C-M) g [N] (解答群の4.) となる。この力でかごを h だけ上昇させる仕事は (C-M)gh [J] となる。このように巻上機がかごを引き上げるために必要な仕事を W_1 [J], 逆にかごを下げるときに必要な仕事を W_2 [J] とする。

 例として、C = 1000 kg の空のかごを 5.0 m 昇降させることを考える。M = 900 kg のおもりを用いた場合、かごを引き上げるのに要する巻上機の仕事は上の式から

W_1 = (C-M) gh = ( 1000 - 900 ) × 9.8 × 5.0
        = 4900 [J]
        = 4.9 [kJ]

となる。おもりを用いない場合の仕事は 49 kJ であるため、おもりを用いると仕事が 10分の1 になる。一方 W_2 についてはおもりの有無にかかわらず W_2 = 0 であるため、昇降全体でも仕事は 10分の1 に軽減されている。

 次に、人の乗り降りによってかご全体の質量が変化する際の仕事の変化を調べ、適したおもりの質量を調べる。昇り・降りのときの積載質量(かごに乗っている人などの質量)をそれぞれ U [kg], D [kg] とする。U > D である場合の高さ H [m] の昇降に要する合計の仕事 W [J] = ( W_1 + W_2 ) として、おもりの質量 M との関係を M を以下の三つに場合分けして考える。

 0 ≦ M < C + D の場合、C + D < C + U より、昇り、降りいずれのときもおもりよりかごの質量が重い。よって

W_1 = (C + U - M) gH [J] (解答群のd.)  W_2 = 0 [J]

したがって W = (C + U - M) gH となる。

 C + D ≦ M < C + U の場合、昇りのときはかごが重く、降りのときはおもりが重い。よって

W_1 = (C + U - M) gH [J],   W_2 = (M - (C + D)) gH = (M - C - D) gH [J](解答群のa.)

したがって W = (C + U - M) gH + (M - C - D) gH = (U - D) gH [J](解答群の8.)

 C + U ≦ M の場合、昇り、降りいずれのときもおもりがかごより重い。よって

W_1 = 0 [J],   W_2 = (M - (C + D)) gH = (M - C - D) gH [J]

したがって W = (M - C - D) gH となる。

以上から、横軸に M, 縦軸に W をとってグラフをする。

となるためグラフは解答群の1.のようになる。このとき W の最小値は C + D ≦ M < C + U での (U - D) gH(解答群の8.)となる。

この値をとる M の範囲内でおもりの重さをとれば、エレベータは 無駄な仕事を減らしてかごの昇降を行うことができる。


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