数学とクイズでくつろいで数学の部屋どこよりも遅い!センター試験数学 解説工業数理基礎 第2問 解説

どこよりも遅い!工業数理基礎 第2問 解説

最終更新日2010年5月11日

問1

 地震が発生すると、P波とS波と呼ばれる2つの波動による揺れが起こる。一般に伝わる速度はP波のほうが速い。この2つの波が観測される時間差を利用して、震源までの距離を計算することができる。

 P波の速度を V_p [km/s] S波の速度を V_s [km/s] とする。観測点と震源との距離が D [km] の時、

地震の発生からP波が観測されるまでの時間は D / V_p [s] (解答群の2.
地震の発生からS波が観測されるまでの時間は D / V_s [s] (解答群の3.

となるためP波が観測されてからS波が観測されるまでの時間(PS時間)は D / V_s - D / V_p [s] である。したがって、PS時間が T [s] の時

T = D / V_s - D / V_p
 = D ( 1 / V_s - 1 / V_p )
 = D × (V_p - V_s) / V_pV_s

となることから

D = T × V_pV_s / (V_p - V_s) [km](解答群の5.

と書くことができる。例えば V_p = 5.0 km/s, V_s = 3.0 km/s, T = 4.0 s のとき、震源までの距離は上の式にそれぞれの値を代入して

D = 4.0 × (5.0×3.0) / (5.0 - 3.0) = 30 [km]

である。

 三つの観測点でのPS時間を用いて、震央の位置と震源の深さを計算する。X,Y,Zの観測点でのPS時間を元に震源までの距離を求める。X,Yを中心として、それぞれから震源までの距離を半径とする円を描いて、2つの円の交点を求める。震央はこの2つの交点を結ぶ直線 a の上に存在する。同じようにX,Zを中心として、震源までの距離を半径とする円を描いて、2つの円の交点を結ぶ直線 b を引く。この2本の直線の交点が震央Oになる。

観測点Zから震央Oまでの距離を計測すると、震源SからZまでの距離が分かっていることから、震源の深さSOを求めることができる。三平方の定理から

SO = √(SZ^2 - OZ^2) (解答群の8.

 下の図の三つの観測点A,B,Cで地震の揺れが観測された。各観測点におけるPS時間はそれぞれ 2.7 s, 5.3 s, 4.0 s であった。 P波、S波の速度を V_p = 5.0 km/s, V_s = 3.0 km/s とすると、

V_pV_s / (V_p - V_s) = 5.0 × 3.0 / (5.0 - 3.0 ) = 7.5

となることから各観測点から震源までの距離は

A: 7.5 × 2.7 = 20. 25 ≒ 20 km
B: 7.5 × 5.3 = 39. 75 ≒ 40 km
C: 7.5 × 4.0 = 30. 00 km

A,B,Cからそれぞれ 20 km, 40 km, 30 km の位置を表す同心円を C_a, C_b, C_c とすると

C_a, C_b の交点を結ぶ直線上に4.と5.の2つの地点がある。
C_a, C_c の交点を結ぶ直線上に3.と4.の2つの地点がある。

よって、これら2直線の交点は4.の地点にあり、ここが震央の位置である。

Cから震源までの距離は 30 km, 図からCから震央までの距離は 24 km と読み取れるので、震源の深さは √(30^2 - 24^2 ) = √324 = 18 km


問2

 ある地域で、ある期間にマグニチュードM以上の地震がN回発生したとすると、MとNの間には以下の関係があることが知られている。

log_{10} N = a - b M …… (1)

 表1の観測結果を図の片対数グラフにプロットしていくと以下のようになる。

プロットした点はほぼ一直線上に並ぶ。これらの点に直線を当てはめてみると

N が 100 のとき、M は約 5.6(解答群の1.
N が 10 のとき、M は約 6.6(解答群のa.

と読める。すなわち

M = 5.6 で log_{10} N = 2, M = 6.6 で log_{10} N = 1

であることから式 (1) において a = 7.6, b = 1.0 と決まる。

当てはめた直線を M = 7.0 まで延長したとき N = 4 の付近で交わる。よって M =7.0 以上の地震が 10 年間に 4 回程度発生すると考えられる。


問3

モーメントマグニチュード M_w は地震モーメント m を用いて

M_w = 0.67 log_{10} m - 6.1 …… (1)

と表される。この式を m について解くと

となる。いまモーメントマグニチュードが 4.0 大きいとき、 M_w は M_w + 4.0 に増える。このときの地震モーメントを計算すると

となるため、モーメントマグニチュードが 4.0 大きいと地震モーメントは 10 の 6 乗倍にも相当する。


数学とクイズでくつろいで数学の部屋どこよりも遅い!センター試験数学 解説工業数理基礎 第2問 解説