「算数」と「数学」の間で その2
最終更新日2006年10月28日
人々の頭を悩ませ続けている算数と数学についてあれこれそれどれ書いています。一応難しい話は抜きで…というつもりで書いています。お茶もお菓子もありませんがごゆっくりお過ごしください。ご意見がありましたらtfujisaki2006@yahoo.co.jpまでお願いします。前回の話はこちらにあります。すぐ下なのですぐ近くなのですが。 「ただの数ですが…」「ただの数ですが…の続き」の2編は別のページに移しました。こちらにどうぞ。
五角形と六角形はどう違う?
下の図は五角形と六角形の形をした紙です。これらがそれぞれ「正五角形」「正六角形」であることを確かめるためにはどうすればよいのでしょうか?さて問題です。(別に大きく書く必要は無いのですが)図の点線に沿って2回折ってぴったり重なったとき、「正五角形」「正六角形」といえるでしょうか?解答と説明は次回。
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五角形と六角形はどう違う?…の続き
この2つの結果をあわせると
つまり5つの角は全て同じ角度になります。同じ考え方を使うと5つの辺がすべて同じ長さになることが分かりますので、この紙は正五角形であることが分かります。
一方、六角形の紙を縦の線に沿って折り重なった……ということは
角B=角F 角C=角E
続いて斜めの線に沿って折り重なった……ということは角A=角C 角D=角F
この2つの結果をあわせると
つまりこれだけでは6つの角は全て同じ角度になることが言えません。ちなみに辺の長さは6つとも同じ長さになります。
ところで、五角形の図をよく見ると折る線は辺CDと辺DEをそれぞれ半分にするようになっています。しかし六角形は辺を半分にするように折っていません。では、六角形でも辺CDと辺DEをそれぞれ半分にするように折れば正六角形と言えるか?
というとそうでもないようです。例えば下の図のような六角形も辺CDと辺DEをそれぞれ半分になるように折れば重なります。
という関係です。
…ということは、正六角形を確かめるためには2回折るだけでは不十分なのでしょうか?その答えは次回。もう少し引っ張ります。
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五角形と六角形はどう違う?…の続きの続き
角B=角F、角C=角E / 辺AB=辺AF、辺BC=辺EF、辺CD=辺DE
ということが分かります。次に斜めの線に沿って折り重なるときは
角A=角B、角C=角F、角D=角E / 辺AF=辺BC、辺EF=辺CD
ということが分かります。
これら2つのことから6つの角の角度、6つの辺の長さが同じになることが分かります。
実はこの「1つの角とその隣の1つの辺を半分にする折り方」はどの多角形でもこの2回の折り方で正多角形であることが分かります。もう一度六角形を例に挙げ、説明を分かりやすくするため白い六角形で話を進めます。
そうすると両方の図を見て分かるとおり、全ての頂点と全ての辺が赤と青の線でひとつながりになります。つまり全ての頂点は同じ角度で全ての辺が同じ長さになることが分かり、正六角形であることが分かります。これは他の多角形でも同じように赤と青のジグザグ模様が出来上がります。
最初の話に戻りますが、五角形の紙で「2つの角を半分にする折り方」で折り重なるとき正五角形であることが分かりました。これも上の説明のように赤と青の線を使うとすべての頂点の角度が同じで、全ての辺の長さが同じであることが分かります。
果たして、この正多角形であることがいえるための折り重なり方には何か法則があるのでしょうか?この答えは次回に。次回は感動…はありませんが最終回です。
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五角形と六角形はどう違う?…やっと最終回
前回の話で「ある多角形の紙を2回折り重なるとき正多角形といえるための折り方に法則はあるのか?」という疑問が残っていました。このことで悩み、人間は大きくなって…それはちょっと大げさですね。さて法則はあるのでしょうか。法則はあります。
無駄に大きく書いてしまいましたが、下の図を使って法則を説明していきます。
例えば、左上の図の1と3の折り目の間には2個の三角形が入っています。(右上の図では1と3の折り目を青で書いていますが分かりにくいですね…) 実はこの「2つの折り目の間にある三角形の数」が法則と関係があります。
法則 |
2つの折り目の間の三角形の数が辺の数と互いに素(=最大公約数が1)の時、その2つの折り方が正多角形を決める折り方である。 それ以外の折り方は正多角形を決める折り方ではない。 |
上の例では、1と3の折り目の間にある三角形は2個。この「2」は辺の数「6」と互いに素でないため、1と3の折り目で折り重なっても正六角形とはいえません。一方1と2の折り目の間にある三角形は1個。「1」は辺の数「6」と互いに素であるため、1と2の折り目で折り重なれば正六角形であることがいえます。…ということは1と2の折り目以外にも、2と3、4と5などの折り目でも正六角形がいえます。
また五角形の場合は、どの二つの折り目でも間の三角形の数は5より少ないため、常に「5」と互いに素。つまりどの二つの折り目でも両方とも折り重なれば正五角形であることが言える訳です。…ということは次のことが言えます。
法則からわかること |
辺の数が素数の多角形は2つの折り目をどのように選んでも、両方の折り方で重なれば、その多角形は正多角形である。 |
たかが折り方、されど折り方…?よく意味は分かりませんが、「互いに素」という数学以外では耳にしない言葉がただ「折る」という簡単な操作とつながっているという、面白いことがわかりました。なお、上の法則がなぜ成り立つか、という理由は高校生程度の知識で説明できますが、ややこしくなりそうですので省きます。お時間がありましたら理由を考えてみてください。
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