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数学とクイズでくつろいで数学の部屋「算数」と「数学」の間で「算数」と「数学」の間で その5

「算数」と「数学」の間で

最終更新日2008年11月23日

人々の頭を悩ませ続けている算数と数学についてあれこれそれどれ書いています。一応難しい話は抜きで…というつもりで書いています。お茶もお菓子もありませんがごゆっくりお過ごしください。ご意見がありましたらtfujisaki2006@yahoo.co.jpまでお願いします。

ここでは 「オイラーの定理をもっと知る」「オイラーの定理をもっと知る…の続き」「オイラーの定理をもっと知る…の続きの続き」「オイラーの定理の謎を解明」の4編を掲載しています。


オイラーの定理をもっと知る

 「コマネチ大学数学部に挑む」の中で「オイラーの定理」という言葉が登場しました。よく知られた定理だと思いますが改めて定理を書いておきます。

凸多面体の頂点の個数をV、辺の個数をE、面の個数をFと置いたとき

V-E+F=2

が成り立つ。

 例えば直方体の場合、頂点の数は8、辺の数は12、面の数は6ですので上の式に当てはめると計算の答えはちょうど2になります。

もちろん、他の多面体でも同じように計算すれば答えはちょうど2になります。

 ところで、このオイラーの定理の「点と線」バージョンをご存知でしょうか。オイラーの定理という名前ではないですが、次のような定理があります。

頂点とその頂点を結ぶ辺からなる図形がひとつながりで辺同士が交わらないとき、頂点の個数をV、辺の個数をE、辺で囲まれた部分の個数をFと置いたとき

V-E+F=1

が成り立つ。

例えば下の図の場合、頂点の数が7、辺の数も7、辺で囲まれた部分が1ですので計算すると答えが1になります。

この「点と線」バージョンの定理を使うと、最初に登場したオイラーの定理が証明できます。簡単に書いていきます。

 まず多面体の一つの面を取ってみます。そうすると頂点と辺のつながりをそのままにぺったんこにできます。

そうすると、上で話した頂点と辺でできた図形ができます。そうすると定理を使うことができます。というわけで…

(頂点の数)-(辺の数)+(辺で囲まれた部分の数)=1

さてこの図形と最初の多面体の頂点、辺、面の数を比べてみます。頂点と辺の数は変わりません。一方、多面体の面の数は最初に一つ取り除いたため、上の図形での辺で囲まれた部分より1多いです。ということは上の式の両辺に1を足します。そうすると

(頂点の数)-(辺の数)+((辺で囲まれた部分の数)+1)
=(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)
=2

これでオイラーの定理が証明できました。

 では、問題です。「コマ大」のページで書いていました「穴の開いた多面体」で上の式を計算するといくつになるでしょう。

申し訳ございません。考える多面体は右の図のような上下の面が出っ張っている多面体に変更して考えてください。そうしないと以降の話に支障が出ます。

答えは次回です。


オイラーの定理をもっと知る…の続き

前回の多面体

この多面体で(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)を計算するといくつになるでしょう?では実際に数を数えて計算してみます。

上の多面体の頂点の数は16、辺の数は32、面の数は16(穴の中の辺と面の数を忘れずに)以上から

(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)= 16-32+16=0

というわけで答えは「0」でした。

 ではこの多面体の場合、なぜ0になるか証明してみます。まず穴の両端をふさいで見ます。

穴をふさぐとこれまでの凸多面体になりました。そうすると一番最初に書いた多面体のオイラーの定理が使えます。この凸多面体の頂点の個数をV、 辺の個数をE、面の個数をFと置いたとき

V-E+F=2

が成り立ちます。次に穴をふさぐ前と後で頂点、辺、面の数がどのように変化したから見てみます。

頂点の数…これは変化なし。

辺の数…穴の中に隠れている辺4本があったので穴の開いた多面体での辺の数はE+4本

面の数…穴をふさいだ面2つが無くなり、穴の中に隠れていた面4つが現れたので穴の開いた多面体での面の数はF+2本

以上から

 (頂点の数)-(辺の数)+(面の数)
=V-(E+4)+(F+2)
=V-E+F-2
=0

これで穴の開いた多面体の(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)を計算すると「0」になります。

しかし、問題は続きます。

次のように穴が2つ開いている多面体を考えると(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)はいくつになるでしょう?

さらにもう1問

次のようにT字の形をした穴が開いている多面体で(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)を計算するといくつになるでしょう?

答えは次回。


オイラーの定理をもっと知る…の続きの続き

前回出した問題の一つ目は次の立体の(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)を計算するといくつになるか、というものでした。

 実際に数を数えて計算する前に、前回の「穴が一つ」の立体と同じように穴をふさいで計算をしてみます。

 一方の穴の両端をふさぐと前回話に出た「穴が一つだけ開いている立体」になりました。この場合の頂点の個数をV、辺の個数をE、面の個数をFと置いたとき

V-E+F=0

となることが分かっています。始めの「穴がニつ」の立体とこのの「穴が一つ」の立体の頂点、辺、面の数の差をみます。

頂点の数…これは変化なし。

辺の数…穴の中に隠れている辺4本があったので穴の開いた多面体での辺の数はE+4本

面の数…穴をふさいだ面2つが無くなり、穴の中に隠れていた面4つが現れたので穴の開いた多面体での面の数はF+2本

つまり

 (頂点の数)-(辺の数)+(面の数)
=V-(E+4)+(F+2)
=V-E+F-2
=-2

「穴が二つ」の立体の場合は(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)を計算すると-2になることが分かりました。

 次に前回の2つ目の問題

この立体についても(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)を計算してみます。これまでの計算結果から予想すると

立体頂点の数-辺の数+面の数
「穴がない」立体
「穴が一つ」の立体
「穴が二つ」の立体-2
と、いうことは…
「穴が三つ」の立体-4

この予想が正しいかどうか、先ほどと同じように穴をふさぐ方法で考えて見ます。図のようにT字の穴の途中から両端の穴をふさぐと…

 先ほどと同じく「穴が一つ」の立体になりました。ということは一つ目の立体と同じく(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)=-2となるのでしょうか?これは恐らく穴のふさぎ方が悪かったからでしょう。思い切って外側の三つの穴を全てふさいでみます。

 これで最初に話した凸多面体ができました。ということはこの多面体の頂点の個数をV、辺の個数をE、面の個数をFと置いたとき

V-E+F=2

始めの「穴がT字」の立体とこの多面体の頂点、辺、面の数の差をみます。


穴の中の形の頂点、辺、面をそれぞれ青で色付けしました。

頂点の数…中に隠れた頂点が4つあるため、「穴がT字」の立体の頂点の数はV+4。
(上の図では見えない位置に頂点が1個ある)

辺の数…穴の中に隠れている辺12本があったので穴の開いた多面体での辺の数はE+12本
(上の図では見えない位置に辺が1本ある)

面の数…穴をふさいだ面3つが無くなり、穴の中に隠れていた面7つが現れたので穴の開いた多面体での面の数はF+4本
(上の図では見えない位置に面が1面ある)

これから計算をすると

 (頂点の数)-(辺の数)+(面の数)
=(V+4)-(E+12)+(F+4)
=V-E+F-4
=-2

…やっぱり-2になりました。

 では実際に頂点、辺、面の数を数えて計算してみます。

穴が二つ開いている立体
頂点の数24
辺の数48
面の数22
 頂点の数-辺の数+面の数
=24-48+22
=-2
T字の穴が開いている立体
頂点の数24
辺の数48
面の数22
 頂点の数-辺の数+面の数
=24-48+22
=-2

 2つの立体は頂点の数、辺の数、面の数いずれも同じだったのですね…

では「頂点の数-辺の数+面の数」と「立体に開いている穴の数」には関係がないのでしょうか。その解説は次回…


オイラーの定理の謎を解明

 下の2つの立体についって「(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)」を計算したところ、両方とも-2になりました。

 始めの立体は「穴が2つ」だから-2となることが何となく分かります。しかし2つ目の立体は「穴が3つ」でありながら-2になりました。なぜなのでしょうか?

 その謎を解く前に注意を一つ。これまでの話の中で「穴が二つ」の立体は穴が一直線に開いている立体を書いていましたが、実は穴は途中で折れ曲がっていても(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)は-2と変わりません。



上のどの立体でも(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)=-2

「穴が三つ」の立体で上の面に開いた穴を大きく開けてみます。



穴を大きくしても頂点の数、辺の数、面の数がそれぞれ元の立体と変わっていないことは分かると思います。ではこの穴に直方体の仕切りを入れてみます。



仕切りを入れたら頂点の数、辺の数、面の数が元の立体との変化を見てみます。元の「穴が三つ」の立体の頂点の数、辺の数、面の数をそれぞれV,E,Fと置くと

頂点の数…青の8個の頂点の部分が新しくできた頂点に当たるため頂点の数はV+8個になる。

辺の数…赤の14本の辺が新しくできた辺に当たるため辺の数はE+14本

面の数…オレンジの6個の面が新しくできた面に当たるため面の数はF+6本

以上から仕切りをつけた立体の(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)を計算すると

(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)
=(V+8)-(E+14)+(F+6)
=V-E+F

仕切りを入れた立体と入れる前の立体の(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)の値は変わらないことが分かりました。

 ところでこの仕切りを入れた立体、よく見ると上から2つの穴が開き、それぞれ左右に分かれて穴が突き抜けています。つまり仕切りを入れた立体は「穴が二つ」の立体になります。そうすると最初の注意で書いたことから…

「穴が三つ」の立体、仕切りの入った立体、 「穴が二つ」の立体

この3つの立体について(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)の値は変わらない、ということです。これで「穴が三つ」の立体と「穴が二つ」の立体の謎が解けたわけです。

 前回の結果から穴が開いている立体については

(頂点の数)-(辺の数)+(面の数)=2-2×(穴の数)

ということが分かりました。



しかしこの穴は全て途中で枝分かれをしない「一本道の穴」の場合に成り立ちます。今回のように途中で枝分かれをした穴がある場合は仕切りを入れるなどして「一本道の穴」を作ってから計算する必要があります。今回のオイラーの定理については「位相数学」という分野の内容をかなり噛み砕いて説明をしました。逆に噛み砕きすぎでよく分からなかったかもしれません。もし興味がありましたら、関係する本を読んでみてください。


数学とクイズでくつろいで数学の部屋「算数」と「数学」の間で「算数」と「数学」の間で その5