数学とクイズでくつろいで数学の部屋「算数」と「数学」の間で「算数」と「数学」の間で その6

「算数」と「数学」の間で その6

最終更新日2010年5月25日

人々の頭を悩ませ続けている算数と数学についてあれこれそれどれ書いています。一応難しい話は抜きで…というつもりで書いています。お茶もお菓子もありませんがごゆっくりお過ごしください。ご意見がありましたらtfujisaki2006@yahoo.co.jpまでお願いします。

ここでは 「双心四角形を描きたい!」「双心四角形を描きたい!…の続き」「双心四角形を描いてみよう」「数学的(?)変調法」の4編を載せています。


双心四角形を描きたい!

 以前「コマ大数学科に挑む」で様々な四角形の説明をしました。その中の一つ「双心四角形」について書いていきます。改めて説明しますが、双心四角形とは「内接円も外接円も持つ四角形」のことです。三角形では常に内接円、外接円はありますが四角形の場合は必ずしもあるとは限りません。


こんな四角形

 何の苦労もないように四角形を描いていますが、「コマ大数学科に挑む」で実際にこの四角形を作るときにどのように描けば良いのかわかりませんでした。内接四角形を作っても外接四角形にならない、外接四角形を作っても内接四角形にならない… 発想の転換で内接円、外接円を作ってから四角形を作ろうとしても


 このようになりうまく描けません。色々調べても双心四角形の作図の方法が見つかりませんでした。そんなときにふと思いついたことが

作図の方法を作ろう

 というわけで私があれこれ計算して見つけた、双心四角形の作図方法をこの場で説明したいと思います。

 「双心四角形」についての説明はあまり見つかりませんでしたが「内接四角形」「外接四角形」についての説明は中学生でも知っているような定理があります。

定理1:円に内接する四角形の向かい合う頂点の角度の和は180度である。定理2:円に外接する四角形の向かい合う2組の辺の和は等しい。

上の図で∠A+∠C=180°
もちろん∠B+∠D=180°

上の図でAB+CD=AD+BC

これら2つの定理ともう一つ「ピタゴラスの定理」を使って双心四角形について調べます。

 今回の話では「4つの辺の長さにどのような関係があるか」ということについて調べてみました。まず、双心四角形の4つの辺の長さを a, b, c, d と置くことにします。しかし最後の d の長さは辺の長さを調節して d=1 と最初から考えても問題はありませんので d=1 として話を進めていきます。さらにこの四角形が円に内接する場合、上の定理から向かい合う角の和が180度になります。そのため、向かい合う角の一方を90度以下、もう一方を90度以上として考えて生きます。


まず何を考えるかというと、四角形を二つの三角形に分けてから青の 対角線の長さを計算していきます。ここからちょっと難しくなりますので次回に回します。


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双心四角形を描きたい!…の続き

 内接円と外接円を同時に持つ「双心四角形」を作図する方法を考えていました。そのために前回お見せした図の四角形で、青の対角線の長さを求める、という話まではしました。


 ここではシンプルにピタゴラスの定理を使って長さを求めてみます。

 まず緑の三角形の一番上の頂点から垂線を下ろしてみます。そうすると長さbの辺は2つに分かれます。aに近い方の長さをsとするともう一方の長さはb−sとなります。当たり前ですね。
 では今引いた垂線の長さはピタゴラスの定理を使うと上の値になります。 さて問題はこれから。これから青の対角線の長さを求めます。そうすると…

 続いてもう一方の紫の三角形で同じ対角線の長さを計算してします。計算の方法は先ほどと同じように垂線の長さを使います。ただ、先ほどの三角形は鋭角三角形でしたが今回は鈍角三角形ですので計算結果が少し違います。

(高校で数学を習った皆さんはこれが「余弦定理」であることが分かりますか?)上の二つの式は同じ対角線の長さを計算した式ですので

となります。

さて、ここで角度の条件を思い出してみます。

向かい合う2つの角度の和が180度ですので上の図で二つの直角三角形は相似になります。ということは辺の比について次のことが成り立ちます。

a:s=1:t ⇒ s=at

 さらにこの四角形が円に外接するときは定理2を使うと

a+c=b+1 ⇒ c=b−a+1

この2つの式を上の対角線の長さの式に入れると…

これ以降はコツコツと計算をしていくと上の計算結果が出てきます。ここまで詳しい説明をしましたので、このぐらいの計算はしてください。

 最後にちょっと複雑な式が出てきました。この式があればbとtに数を入れるとaの値が決まります。そうすると定理2を使って求めた「c=b−a+1」を使ってcの値も決まります。

bとtを決める。上の式からaが決まる。c=b+a−1から
cが決まる。

つまりbとtを決めるとa,b,c,tが全て分かるため、(tから1とcの間の角度が分かるため)双心四角形を作ることができることが分かります。

 この式を使うと双心四角形に関する様々なことが分かります。それは次回。


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双心四角形を描いてみよう

 双心四角形の辺の長さについて次のような関係があることが分かりました。

 つまりbとtに値を入れるとa、cの値が分かるため、双心四角形の辺の長さが分かります。

 ここでいくつか具体的に値を入れて双心四角形の辺の長さを決めてみます。

・まず紫の三角形の角度が90度のとき。 このとき紫の三角形の図の右側にある直角三角形がつぶれてしまいます。つまり「t=0」となります。この値を入れると

何と「a=1、c=b」というシンプルな式になりました。 いま紫の三角形の角度が90度ですので、緑の三角形の角度も90度です。さらに2つの三角形の 直角を挟む辺は共に長さ1とb(これは決まっていない)つまり紫と緑の三角形は同じ直角三角形に なります。このとき外接円の性質から、直角三角形の斜辺は外接円の直径になります。それが分かると 双心四角形を簡単に描くことができます。

 できました。何だか簡単な形で物足りないかな、と思われる方にもう一つ例を挙げます。

紫の三角形の角度が120度のとき。このとき「t=1/2」となります。この値を入れると

今度は少し複雑な式が出ました。辺の長さが分数のままでは複雑なので これから4つの辺の比をとってみます。

少しはすっきりした値になりました。いくつかbに値を入れてみます。

bの値4つの辺の比
b=1 3: 2: 1:2
b=2 9:10: 6:5
b=3 2: 3: 2:1
b=415:28:20:7

(b=1,3のときは代入の後、さらに各値をそれぞれ2、6で割っています)辺の比が分かれば双心四角形の作図は簡単にできます。特にb=1のときの「3:2:1:2」の辺の比の四角形は正三角形を元に作ることができます(b=1,3のときは同じ双心四角形ができます)


赤と青の正三角形を並べると「3:2:1:2」の辺の比の双心四角形ができる
ちなみに始めに載せた双心四角形(右の図)はこの四角形を横にしたものである。

しかしb=4以上になるとちょっと細長い双心四角形になりそうです。でも作図はできます。始めは作図が難しいと思っていた双心四角形を計算することである程度の作図のヒントを与えてくれることができました。

 実は双心四角形については内接円、外接円に対して次の定理があります。

双心四角形の外接円、内接円の半径をそれぞれR,rとおき、
2つの円の中心間の距離をdと置くと次の式が成り立つ。

 このことから次のことが分かります。

双心四角形の外接円、内接円の中心が同じ(d=0)のとき

が成り立つ。これは双心四角形が正方形であることを意味する。

 …ちょっと当たり前な結果で申し訳ないです。双心四角形についてはおそらくあまり調べられていないかもしれません。今回の辺の関係以外にも面白い性質が出てくるかもしれません。


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数学的(?)変調法

 楽器の演奏や歌を歌うときに使う「楽譜」ただの記号の列で数々の名曲を生み出した。あのわからない人にはわからない(当たり前ですが)記号の列には数学的な要素が数多く隠されている…はず。

 数学的な要素として今回変調の方法についてご紹介します。まずは変調がない楽譜です。

 特に何の問題もありません。ではここにシャープを一つ付けて変調をさせます。

なぜあの場所にシャープが付くのでしょうか??続けて二番目、三番目のシャープを付けると

なぜあの場所になるのでしょうか??さらにシャープを付け続けると…

上の楽譜のような付け方になります。何となくきれいな形に…この形には、きっときれいな(?)理由がある…ということで、なぜシャープがこのように付くのかご説明します。

 まずはシャープが付く順番をまとめてみます。

順番
音階ファ

 このように表にすると分かると思いますが、次にシャープを付ける音階は前の音階より4つ高い音階(または3つ低い音階)になります。ではなぜ一番初めにシャープを付ける音階はドではなくファなのでしょうか?そしてなぜ前の音階より4つ高い音階に次のシャープを付けるのでしょうか?

 その理由は音階の波長に問題があります。ピアノの鍵盤を見ると白鍵の間に黒鍵があります。ピアノのそれぞれの鍵盤は隣の鍵盤(黒鍵も含めて)との波長の比率が一定しています。ちょっと数学的な書き方をすると

ド:ド♯=ド♯:レ= … =シ:ド

 黒鍵の音階も含めた12個の音の中から音楽を作りやすい7音を選んでそれに「ドレミファソラシド」と音階をつけた…ということだと思います。
 つまり「ドレミファソラシド」だけで考えると隣の音階との波長の比率は必ずしも一定ではありません。図で表すと次のようになります。

上の図では「1,2」と表していますが、実際は比率の関係は

レ/ド=(ファ/ミ)^2

などの関係が成り立つわけです。

 では、この「ドレミファソラシド」のうち一つの音階を半音上げて(♯をつけて)かつ「ドレミファソラシド」の関係を保つためにはどうしたら良いのでしょうか。各音階で半音上げて考えるとファを半音上げた時に「ドレミファソラシド」の関係を保つことがわかります。しかし、音階の順番はこれまで「ソ」だった音を「ド」として音階を作らなければいけません。つまり

となります。実際にピアノなどで「ソラシドレミ(ファ♯)ソ」を演奏するときちんと「ドレミファソラシド」になっています。

 ではシャープを2個付けるときはどうなるでしょうか?1個付けた時は「ファ」にシャープを付けて、音階をずらしました。同じ要領で新しく作られた「ドレミファソラシド」の「ファ」の位置(元の「ド」)にシャープをつければよいのです。これを続けると次のようにシャープを付けていくことになります。

シャープの個数ファ
0個ファ
1個ファ♯
2個ド♯ファ♯
3個ド♯ファ♯ソ♯
4個ド♯レ♯ファ♯ソ♯
5個ド♯レ♯ファ♯ソ♯ラ♯
6個ド♯レ♯ミ♯ファ♯ソ♯ラ♯
7個ド♯レ♯ミ♯ファ♯ソ♯ラ♯シ♯

(各列青の音階の次の音を「ド」として「ドレミファソラシド」を奏でることができる)
 いかがでしょうか。音楽の世界でも今回の話のような数学の要素がちょっと入った仕組みがあるのです。これで楽譜が完全に読めるわけではないですが、参考になれば幸いです。今回は半音上げる(シャープ)の話だけでしたが、半音下げる(フラット)についても同じ要領でフラットをつける順番が決まります。

なぜフラットの付く順番が上のようになるかは皆さんで考えてみてください。
今回ト音記号の画像を「
無料アイコン素材」さんからお借りいたしました。そのほかの四分音符、シャープ、フラットの記号は自分で作成いたしました。いびつな形でごめんなさい。


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